ソニーがFX9を発表 - フルフレームセンサー搭載
ソニーは好評のFS7IIの上位機種、FX9を発表した。フルフレーム、高速ハイブリッドオートフォーカス、デュアルベースISOなど多くの新機能を搭載している。
ソニーはIBCに先駆けてロンドンで発表会を行い、実際に試用したので後日レポートする。
FX9の背景
筆者はFS7を過去5年間使用しており、主にドキュメンタリーやコーポレートビデオを撮影している。また、数年後には2台目も購入した。なぜなら、撮影に対する需要が非常に多かったからだ。 FS7はどこにでもあり、少なくともヨーロッパでは最も広く使用されているSuper35mmシネマカメラだ。ソニーは、FS7は最も売れたSuper35mmカメラであると述べている。
FS7 Mark IIではあまり大きな更新は無かったが、可変NDフィルターの採用は目を引いた。それ以外は、従来のFS7を踏襲するもので、そろそろ大きな更新の時期に来ていたと言える。
FX9は、FS7の成功体験に基づいて開発されたカメラだ。
11年前にキヤノン5D Mark IIが登場して以来、35mmフルフレームフォトセンサーでの撮影が主流になりつつある。しかし、DSLRやミラーレスではない、フルフレームセンサーを持つ手頃なプロ用カメラがやっと登場した。ソニーには、3:2のフルフレームセンサーを備えたVENICEが既にあるが、今回17:9のフルフレームセンサーを備えたローエンドのカメラとしてFX9が登場した。
6Kセンサーからダウンサンプリングして4K映像を生成
FX9には6Kセンサーが搭載されている。ただ6Kを記録することはできず、4Kでのみ記録できる。 6Kをダウンサンプリングすることにより、非常に鮮明な4K映像を記録することができるとしている。またこれにより、より大きなフォトサイトで感度が向上し、優れたオートフォーカス機能を持つとも述べている。これについては後で触れる。
新EXMOR Rセンサーを採用しデュアルISO を搭載
新しいEXMOR Rセンサーが搭載されており、これはVENICEのセンサーとは異なる。ただし、デュアルベースISO に関してはISO800とISO4000で、VENICEと同じだ。なおダイナミックレンジは、15stop以上あると同社は述べている。これに関してはラボテストで確認したい。FS7が良好な結果を残しているので、期待したい。
XDCA-FX9ユニットで16bit RAW出力が可能
コーデックは、XAVC-Intra(10ビット4:2:2、最大4K)でFS7と同じスペックとなっている。またオプションのXDCA-FX9ユニットを接続すると、最大16ビットのRAW出力が可能。 XDCAユニットには、D-Tap、DC Hirose 4ピン出力、イーサネット、およびDWXスロットインタイプのオーディオも搭載している。もちろん、Vマウントバッテリーにも対応する。
16ビットRAW出力は1本のケーブルで出力されるが、現在は4K RAW出力のみが可能。インタビューでは将来6K RAW出力を検討していると述べている。キヤノン(C500 Mark II)やパナソニック(EVA1やS1H)と比較する上でも、この機能は必須となるだろう。
XDCA-FX9ユニットにより、10ビット 4K 120p出力も追加される。我々の知る限り、これらのモードを記録できるレコーダーはまだない。ソニーは、これらの機能に対応する新しいレコーダーの開発について現在Atomosと話していると述べている。
当初は16:9のみで記録
当初は、FX9にはUHD 4Kおよび1080p で16:9のアスペクト比のみ撮影可能だ。 4K DCI、2K DCIおよび5Kクロップモード(これも4Kにダウンサンプリングされる)は、将来のファームウエアアップデートで追加される予定。
6Kフルフレーム(ただし4Kのみで記録)で最大30p、フルフレーム5Kクロップで最大60p、およびSuper35mmクロップで60pの撮影が可能。将来のアップデートにより、これは120pになる予定。少なくともSuper35mmクロップでは、FS7と同じハイフレームレートになり、最NTSCモードで180fps、PALモードで150fpsになると予想される。
上記のビデオでは、4Kにダウンサンプリングされたフルフレーム6Kモード、フルフレーム1080pモード、4K Super35mmクロップ、1080pでのSuper35mmクロップのテストクリップを見ることができる。 Super35mmクロップ1080pモードにはかなりのモアレが見て取れるが、プリプロダクションモデルでの撮影のため、ソニーは、これらすべてのモードはまだ最終ではないとしている。
VENICEのカラーサイエンスS-Cinetoneを搭載
上記のビデオは、肌色を美しく見せるS-Cinetoneと呼ばれる新しい画像プロファイルで撮影されている。この新しいカラーサイエンスはVENICEで初めて搭載され、同様のものがFS5 Mark IIにも導入されているが、このスキントーンは見事だ。すばらしいのは、画像が良好なラティチュードを保持しているように見えること。これは、グレーディングに時間が取れないテレビ番組の標準になっていることがわかる。
デュアルISOによる低照度特性の向上
フルフレームによる、より浅い被写界深度とより広角で撮れるという特徴とは別に、ISO800とISO4000のデュアルISOはFS7を超えるFX9の大きな進歩だ。
FS7は低照度では優秀だが、高ISOではあまり良い結果ではない。FX9はこの弱点を完全に払しょくしている。 ISO4000に切り替えると、ISOを最大12,800まで上げることができる。また、画像は完全にノイズフリーではないが、ほとんどの目的に使用できる。FX9はα7S IIの低照度特性に匹敵するカメラと言える。
電子式バリアブルNDをフルフレームカメラでは初めて搭載
FX9は、フルフレームセンサーに電子可変NDフィルターを備えた初のカメラだ。
IBIS非搭載ながら、ジャイロメタデータを搭載
ビルトインNDフィルターとの組み合わせが難しいという理由で、FX9にはIBIS(ボディ内手振れ補正機能)が搭載されていない。ただし、FX9にはジャイロ機能があり、手振れをクリップに重畳されるメタデータとして記録する。このメタデータは、ソニー独自のCatalystソフトウェアを使用して、電子的に安定させることができる。他のNLEメーカーと、将来このメタデータをサポートする方向で話し合われている。
ハイブリッドAF
オートフォーカスはFast Hybrid AFが採用されている。これは、キヤノンのシネマカメラで採用されているデュアルピクセルオートフォーカスに匹敵し、FX9にも搭載されている。
FS7に採用されていた従来のコントラストベースAFだけでなく、位相差検出も使用する。これにより、高速でスムース、かつ被写体を正確に追跡できるAFとなっている。
特に印象的なのは、顔検出オートフォーカスだ。ショット内のすべての顔を自動的に検知することができる。顔登録を使用すると、1つの顔を選択でき、フォーカスは可能な限りその顔に固定される。印象的なのは、その顔が少しの間フレームアウトしても、ロックされたままになっていることだ。
筆者が行ったテストでは、新しいソニーの35mmレンズでほとんどf / 1.8で撮影していたため、オートフォーカスが非常に困難だったが、90%で非常にうまく機能した。
映画の世界ではオートフォーカスはまだまだ認知されていないが、時代は変化している。オートフォーカスは決して完璧ではなく、例えばフォーカスプラーのようなコントロールはできないため、シネマレンズとフォーカスプーラーをすぐに置き換えることはないが、テクノロジーは急速に進化している。
タッチスクリーンではない720pのLCDスクリーン
少しがっかりするのは、FX9にはタッチスクリーンではないFS7と似たようなLCDスクリーンが、まだ採用されているという事実だ。解像度は720pで以前よりも鮮明になったが、ハンドルのジョイスティックで顔をすばやく選択するのは難しい。 これはキヤノンがC500 Mark IIのように、適切なタッチスクリーンを搭載して欲しいところだ。
レバーロックタイプのEマウント
マウントはレバーロックタイプのEマウントが採用されている。カメラを三脚に取り付けてレンズを交換しなければならないため、多少の制約がある。そうしないと、レンズのマウントに両手が必要になるため、カメラを落としてしまう可能性がある。
それでも、このマウントをフルフレームセンサーで実装できたことは素晴らしいことだ。フランジ距離が短いというEマウントの利点を生かし、アダプターを使用して既存のレンズを使用することができる。
タイムコードとゲンロックポートを本体に搭載
FX9には、カメラ本体にタイムコードとゲンロックポートを搭載している。タイムコードを使う場合、XDCAユニットは必ずしも必要ではない。
Wi-Fiカメラコントロールとスマートフォンへの映像伝送
FX9はWI-FI画像伝送機能を内蔵しており、スマートフォンの専用アプリで映像を見ることができる。遅延は約1秒。また、カメラ機能も制御できる。
なお、アプリでのカメラコントロールは、カメラ本体のディスプレイでの操作よりずっと簡単に思える。将来カメラにタッチスクリーンが追加されるようなことがあるなら、このスマートフォンアプリのレイアウトを踏襲するだけでよいだろう。
ボディ色はグレーに
FX9はFS7と非常によく似ているが、少し長くなっており、すぐに肩に乗せることができる。カメラのフィニッシュはグレーでFS7から多少変更されている。テストでは、4つのプロトタイプのうち1つだけが最終の色で他は黒だったが、製品版では全てグレーになる。
新しいグリップベルトを採用
残念ながらFS7のルーペデザインが踏襲されたが、これはあまり良くない。マウントするレンズとカメラの重心によっては、肩の正しい位置に置くには長すぎる。また、ハンドルも同じだ。ハンドルにはグリップベルトが追加されたが、これは素晴らしく、カメラを安全に保持できる。
ボタンとオーディオコントロール
側面には多数のボタンが用意されている。最も注目すべき新しい追加機能は、チャンネル3と4の2つの追加されたオーディオコントロールホイールだ。デフォルトでは、これは内部マイクに割り当てられているが、以前と同様に、スマートホットシューで変更できる。 ソニーの新シリーズのUWP-Dオーディオレシーバーと互換性があり、オーディオ信号の完全なデジタル伝送により、音質が向上している。UWP-Dの新シリーズは、まもなく出荷開始の予定。
EマウントシネマレンズFE C 16-35mm T3.1 G
Eマウント用の新しいシネマレンズシリーズも発表された。最初のレンズは16-35 T3.1で、来年春に発売予定。このレンズは正確なマニュアルフォーカスと高度なオートフォーカス機能をサポートしている。
この新しいシリーズは、今後さらに多くのラインアップが期待される。
FX9のキットレンズ FE PZ 28-135mm f/4
また、ソニーが数年前にFS7で導入した既存の28-135mm f / 4ズームは、フルフレームセンサーをカバーするズームレンズのため、FX9でも用途の広いレンズとして使用できる。レンズのワイド端の28mmは比較的広角のため、FX9では常用のズームレンズとして使用できる。
まとめ
ソニーはFX9はFS7の後継ではないと述べているが、その通りだろう。 FS7をベースとして、可能な限りアップグレードされている。FX9の価格はオープンだが、市場想定価格は120万円前後(税別)で12月に出荷が予定されている。キヤノンのC500MarkIIの市場想定価格は176万円前後(同)とされているので、同じ6Kクラスのセンサー搭載機としては低価格になっている。 ただ6K出力が追加されることが強く望まれる。
なお、非常に優秀なオートフォーカスは、プロの制作でも本当に使える機能だ。S-Cinetoneカラーのルックと相まって、FX9も世界中でベストセラーとなるだろう。
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