キヤノンから新製品の発表が相次いでいるが、ひとつ際立っているものがある。新しいフラグシップだ。前のレポートでも言っているように、C700はCINEMA EOSラインアップで新しい頂点として登場した。このカメラが、競合居並ぶシネマカメラの中にあって、どのような位置に立つのか考えてみたい。
まず言っておきたい。自分はキヤノンファンだ。現在、1D C、C100、C500を使用している。
何とも言えない温かみのある映像が、自分にとっては魅力だ。Cinema5Dの読者諸氏同様5D Mark IIに魅せられ、それ以来、長い付き合いなのである。
C700を見て感じるのは、キヤノンがフィードバックをかなり聞いたのではないかと言うこと。今までとは違ったアプローチであることは明白だろう。4.5K RAWセンサー、人間工学的に考えられた形状、モジュラーデザイン、グローバルシャッター、オプションだが4K 120fps記録など、素晴らしい映像を見せてくれそうだ。しかし、実は、いまひとつしっくりこないのだ。
何故だろうか?
それは、これらの機能は2年前に欲しかったものだからだろう。C500は、気に入っている。もし6Kセンサーや改良されたEVF、進化したスローモーションがあれば、真の競合であるREDにも勝るだろう。
キヤノンC700と、ソニーF55、Arri Amira、そしてREDと比較してみた。C700は解像度、フレームレートの選択、ダイナミックレンジ(多少だが)、そして操作性において、他のカメラを超えられていない。外部モジュールを装着すると4K 60fps以上で記録できるが、やはり、大きさや重量が増す外部機器ではなく、内部記録してほしかった。
価格は、カメラ本体が$28,000で、OLEDモニターやCFast2.0カードは含まれない。ショルダーマウントや外部レコーダーも別売。価格も高価だ。購入する人は、レンタルハウスか、あるいはRED、Arri、F55などのオーナーで、買い替えを考えているユーザーだろうし、映画人が飛びつくようにも見えない。まあ、これは自分がC500のファンだっただけに、余計にがっかりしたからかもしれないが。
もし2016 Oscar nominated films のリストを見る機会があったら、是非使われたカメラの項目を見て欲しい。そこにはArriとREDで占められているのが分かるはずだ。ソニーもまた、切り込めないでもがいている。Arriが圧倒的に支持されている、閉ざされた映画の世界に切り込むのは、キヤノンとて長い道のりを要するだろう。
キヤノンは、映画製作者に、C700で撮らなければいけない理由を提示できなかったのだが、それこそが問題なのだ。ハイエンドシネママーケットでイノベーターになることが求められていたのだ。新製品開発に大きな投資がされ、我々も長い間発売を予期していたのだから、キヤノンには、もっと現場の映画製作者の意見を聞いて欲しかった。トップDPが、今使っているカメラの何に魅力を感じ、次は何に期待しているかを見極める必要があるのだ。
自分としては、とりあえず、今あるカメラで撮影を続け、C700に移行するかどうかの判断は後にしようと思っている。ただ、これからカメラを購入する人にとってはC500の価格が下がるのも魅力で、Odyssey 7Q+ を使って4Kを撮るという選択もある。これならC700を購入するより$20,000も安価になるのだ。
果たして、C700は映画制作現場で認められるだろうか?興味のあるところではある。