RED Digital Cinemaの創設者であるJim Jannard氏は、引退し、HYDROGENプロジェクトを閉鎖すると発表した。REDが開発を進めていたHYDROGENスマートフォンプロジェクトは進展が見られず、第一世代が公開されたものの、それ以降の情報が無かった。 同氏は、既にユーザーの手元に渡ったHYDROGEN Oneは今後も引き続きサポートされると述べている。
2019年10月24日午後6時48分にH4Vuser.net でJim Jannard氏が「Everything changes」というタイトルでメッセージを投稿した。
I have spent the past 45 years building “inventions wrapped in art”.
Just now turning 70 and having a few health issues, it is now time for me to retire.
I will be shutting down the HYDROGEN project, ending a career that has included Oakley, RED Digital Cinema and HYDROGEN. I am very proud to have worked with many great people over the years who have signed on to the vision.
RED Digital Cinema will continue stronger than ever with Jarred, Tommy and Jamin at the controls. Komodo is about to be launched… and the HYDROGEN One will continue to be supported in the future.
I want to thank everyone for the support I have felt over the years…
Jim
要約すると、
氏は今年70歳になり、いくつかの健康上の問題が発生したのでリタイアすることにした。HYDROGENプロジェクトは中止する。このプロジェクトに関わった多くの素晴らしい人々と長年働いてきたことを誇りに思う。RED Digital Cinemaは、Jarred、Tommy、およびJaminの各氏がコントロールし、HYDROGEN Oneは引き続きサポートする。
とのこと。
成功物語
Jim Jannard氏(1949年6月8日生まれ)は、アメリカのデザイナー兼ビジネスマンで、1975年にオークリー(Oakley)を創設。オートバイのアクセサリーから始め、後にサングラスのメーカーとなった。事業は成功し、オークリーのサングラスは世界中で人気となった。 同氏は2007年11月にオークリーを21億ドルで売却し、RED Digital Cinemaを創設した。彼はカメラ収集家としても知られている。
REDは、最初のカメラRED ONEで映画業界を変えた。当時、デジタルシネマカメラの機能は十分でないうえ、非常に高価だった。そこでJannard氏は、映画製作者コミュニティ向けに手頃な価格のシネマカメラを開発することを決意し、2007年にリリースされたRED ONEは、Redcode RAWで最大4K 60fpsで記録することができた。このスペックは今日でも通用する。 RED ONEの破壊力はすさまじく、より手頃な価格で高品質なデジタルシネマカメラにもラインアップを広げた。
REDは常に解像度をはじめ、映画制作における限界を押し上げてきた。最近、いくつかの疑問に思えるトピックもあり、しばしば日の目を見ない製品を発表するということがあったが、REDが映画用カメラの先駆者であることは変わらない。
同氏は最近、あまりREDで活動していなかったようだ。 RED Digital Cinemaは、数年前からJarred Land氏が表に立っている。Jannard氏のここ数年の主な活動は、映像撮影向けスマートフォンのHYDROGENプロジェクトに集中されていた。
HYDROGENの物語
2017年7月に初公開されたRED HYDROGENは、高品質の撮影機能に重点を置くスマートフォンだった。REDが「メディアマシン」と呼ぶこのスマートフォンは、アルミニウムかチタンのバージョンが選べ、ホログラフィック3Dディスプレイが装備されていた。多くの人がデポジットを支払い、HYDROGEN One待っていた。
しかし開発は予想以上の困難に直面し、特にチタンバージョンでリリースは数回延期された。そしてやっとユーザーが手にしたものもあまり満足できるものではなかった。リリースが大幅に延期されたため、HYDROGEN Oneのハードウェアはもはや新しさを失っていた。
最も大きな問題の1つは、常に不具合が発生する指紋センサーだ。しかし、最大の失望の1つは、シネマモジュールなどのモジュールが無かったことだ。このモジュールは、REDのスマートフォンのセールスポイントになるはずだった。
その後2019年7月にJannard氏は、第2世代のHYDROGENに取り組んでおり、今回は約束されたシネマカメラモジュールが登場すると発表した。
HYDROGENの終焉
今回の発表は、多くのファンとユーザーを大きく失望させたことは間違いない。多くの顧客が新しいアップデート、新しいモジュール、そして新しいHYDROGEN Twoを待ち望んでいた。第二世代のHYDROGENは第一世代の汚名を挽回することが期待されていたのだが、すでにその可能性は無くなった。
既にユーザーの手に渡ったHYDROGENは今後も引き続きサポートされると述べているが、おそらくバグ修正は引き続き行われるものの新機能の開発は無いだろう。新しいRED KomodoシステムにHYDROGENを含める最初の計画は、おそらく再考されると思われる。
現在、HYDROGEN Oneが、当初のユーザーによって多数売りに出されているようだ。 今後HYDROGENは、マニアの間で高値で取引されるものになるのかもしれない。 しかしREDにとっては、これ以上このプロジェクトに投資する可能性は少ないだろう。
Source: H4Vuser.net, Wikipedia