スマートフォンやタブレットがモバイルメディア制作ツールとして使用されるにつれ、今後我々の仕事の多くはポータブル機器に取って代わられるだろう。REDが発表したHydrogen Oneは、将来のモバイルメディアの主流になるのだろうか?
出先でハイエンドコンテンツを作成したいという要求は非常に現実的だ。プロフェッショナルメディア制作用として設計されていない民生機器は、プロ用途としては常に限界がある。これは、ポータブルなプロ用機器の必要性を意味している。自分のニーズに合わせて使っているうちに、これが専用の機器になってしまうことはよくあることだ。
小型のビデオカメラに大きな被写界深度アダプターを付けて、シネマライクな映像を撮ろうとしていたとき、REDは皆が望んでいるカメラを開発した。 RED Oneは、その後に来る方向性を定義付けたわけだ。
モバイルメディア制作のためにスマートフォンの限界に挑んでいる人々にとっては、REDが再びその道を定義づけてくれるのではないかという期待がある。
RED Hydrogen One
7月6日、REDはHydrogen Oneスマートフォンを発表した。最も革新的で一目置かれているシネマカメラメーカーが、ハンディーのモジュラーメディアシステムを発表したということに注意を払うべきだろう。
REDはHydrogenをカメラとして見ていないようだ。REDはこれをモバイルメディア制作エコシステムの中心にしようとしている。
我々はモバイルデバイスで高品質のプロフェッショナルビデオを録画する機能を望んでいるが、REDのものは、高ビット記録深度、HDR、R3D rawを望まなければ、それなりに高帯域幅データで記録できる。 REDシネマカメラの性能には及ばないが、Hydrogen Oneの将来のセンサーやレンズマウントモジュールなどは他のモバイルデバイスより優れている可能性が高い。いずれにしても時間の問題だろう。
アップルとサムスンはどうした?
その昔、RED OneがSuper35mm単板のRAW録画シネマカメラを開発する前から、同じ可能性がソニーなど他のメーカーにもあっただろう。決断するかしないかは、それらのメーカーの動機付けや経営者による。アップル、サムスン、ソニーには株主がおり、未知のものに投資するリスクや、投資しているロードマップのリスクを冒す決断はできない。コンシューマーマーケットで小さな改善を重ね、安定した利益を出すことが優先されるのだ。
破壊的なイノベーションは、このような企業から起こることはない。アップルは破壊的なイノベーションの長い歴史を持っており、今でも輝かしい企業ではあるが、もはや革新的な企業とは言えない。
モバイルメディアと小型化
テクノロジーの漸進的な小型化は、明るく魅力的な未来を期待できる。巨大な35mm映画カメラから今日のコンパクトデジタルシネマカメラへの移行もさることながら、民生用ビデオカメラやハンドヘルドビデオカメラでさえもスマートフォンに置き換えられてしまっている。
大きな映画スクリーン、家庭用テレビ、ラップトップパソコンは、今や携帯電話とタブレットに対して二次的なものになっている。ソーシャルメディアにより、コンテンツ制作は誰でもできるようになった。誰もが毎日コンテンツを作成している。プロは優れた映像作品を作ることができるが、ツールが改良され、自動化が進み、誰でも専門的な技術スキルが無くても、優れた作品が作れるようになってきた。プロとの差は確実に小さくなっているのだ。
技術の向かう先
RED Hydrogen Oneは一般のスマートフォンよりもはるかに多くのことができる。実際、それをスマートフォンと考えるのは正しくない。 その形跡が残っているのは、唯一電話をかけられることだ。これは、モジュラーで拡張可能なモバイル通信ハブで対応される。これは、将来のインタラクティブなコンテンツ制作に向けて作られた強力なパーソナルコンピューティングデバイスなのだ。
これは映像制作ではリーダーのひとつであるREDが作ったものなので、間違いなくクリエーターのためのツールだ。しかしそれだけではない。これは、我々がコンテンツ制作への取り組みを根本から問い直す、まったく新しいディスプレイ技術を組み込んだデバイスだ。今のところ、これを手にした人はほんの一握りだ。少なくともDavid Fincher氏とBrad Pitt氏がそれを見ていることは分かっている。REDが一貫して新しい挑戦を続けていることを知っておくことは重要なことだ。
REDは出荷までHydrogen Oneを発表するのを待つようなことはしない。 彼らは常に開発プロセスにユーザーを巻き込む。そしてそれはREDを他のメーカーと異なったものにしている一つの要素だ。
クパチーノ(アップルの本社所在地)は見ているだろうか? REDがちゃぶ台返しをする(upset the Apple cart)のかどうかは、そのうち分かるだろう。
RED Hydrogen Oneの詳細については、同社のWebサイト参照いただきたい。