ミラーレスカメラのレンズは、レンズアダプターで多くののカメラに対応できる。しかし、それには一定のルールがあり、これを記したハンドブックがある。
デジタル一眼レフのレンズをミラーレスカメラに取り付けることができるのは、良く知られた事実だ。キヤノンやニコンのレンズは、ソニーの Eマウントカメラに取り付けることができる。たとえば、キヤノン28-70mm f / 2レンズをα7R IVやニコンz6にマウントできる。
レンズアダプターについて
キヤノンEFレンズは広く普及している。C300Mark IIはもちろん、RED Weaponや、時にはソニーFS7にも使われている。それを可能にしているのは、高品質のアダプターだ。電子レンズシステムはもう少し複雑になるが、ビンテージSLRレンズなどをインディーズ映画に使用している例は多い。
ただし、すべてのレンズアダプターが高品質という訳ではないし、カメラとレンズの組み合わせが全く自由という訳でもない。あるレンズがあるカメラにマウントできるかは、フランジバックに関係する。即ち、レンズマウントからセンサーまでの距離だ。レンズは、画像をセンサー面で正確に焦点が合うように設計されている。したがって、レンズが対応できるかは、カメラのセンサー面とレンズの距離が正しくとれるかによる。
フランジバック
長いフランジバックを持つレンズは、短いフランジバックのカメラに取り付けられる。キヤノンEFマウントカメラのフランジバックは44mmで、46.5mmのより長いフランジバックを持つニコンGレンズに対応できる。ただし、キヤノンEFレンズはニコンのDSLR本体に取り付けることはできない。
しかし、これらのアダプターを使用すると、画質が急速に低下する可能性がある。これらのアダプターによる補正は非常に正確である必要があり、低品質のものはシャープネスが低下し、期待する結果が得られない。また無限遠フォーカスは不可能だろう。これらの問題を解決するには多大な費用が必要で、率直に言って、お金があれば、システムを買いなおした方が早いだろう。
もちろんレンズアダプターで対応できるなら最小の費用で済むわけで、そのためにこのフランジバックを記したチャートは役に立つだろう。
チャートの読み方
レンズの適応には2つの基本的なルールがある。
その1:
レンズのフランジはカメラのフランジより長くなければならない
その2:
レンズの画像サイズは、カメラのセンサーサイズ以上である必要がある
従ってソニーEマウントレンズをニコンD850にマウントすることはできない。レンズがセンサーに近づきすぎるためだ。ただし、ニコンFレンズをソニーEマウントカメラに取り付けることはできる。アダプターは、本質的に、レンズとカメラの間のスペーサーとして機能する。
同様に、おそらく技術的にソニーEマウントカメラにマイクロフォーサードレンズを取り付けることもできるが、MFTレンズはフルサイズの半分のサイズのセンサー用に設計されているため、これをやってもあまり意味がない。
実際には、技術的に可能でも実用的に意味がない場合もある。大まかに言えば、あるレンズがカメラ本体で機能するためには、カメラのマウントよりもチャート上で大きい必要がある。しかし、小さい場合はほとんど間違いなく利用価値がない。
DSLRのフランジバック
このレンズアダプターハンドブックを読むと、いくつかのことに気付く。まず、30〜40mmの範囲にマウントが存在しない。次に、DSLRとSLRが上位範囲(40mm以上)を占有しているのに対し、ミラーレスシステムはすべて20mm前後にいる。
SLRは「Single Lens Reflex」の略だ。 即ち、1本のレンズがビューファインダーとフィルム/センサーに画像を送る。そして、ミラーがそれを可能にしている。それは、光の経路を選択する。この構造には、約40mmの空間が必要なのだ。
ミラーレスのフランジバック
一方、ミラーレスカメラは文字通りミラーが無いので、この空間は必要ない。必要なのは、センサーの前にフィルター(IRフィルター)を配置したり、場合によってはモアレを除去するローパスフィルターを配置する厚みだ。もう一つは、オートフォーカスなどに必要な電子接続を設置することだ。それにしても、マウントからセンサーまでの18mm前後の距離は、DSLR/SLRに比べると驚くほど短い空間だ。
しかし、ミラーがなくても制限はある。最新のデジタルカメラは、単なるセンサーとマウントではない。 IBIS(ボディ内手振れ補正機能)は、センサー自体を動かして手振れを相殺する。センサーとレンズが衝突しないよう、ある程度余裕が必要になる。ほとんどのカメラには、モアレ対策用の光学ローパスフィルターと、可視スペクトル外からの光を除去する赤外線(IR)フィルターも搭載されている。これをすべて、この狭い空間に詰め込む必要がある。
ミラーレスマウントの将来
キヤノンRレンズは20mmのフランジバックで最も柔軟性があり、ソニーとニコンのカメラボディに対応できる。16mmで最も浅いニコンZマウントカメラは、キヤノンとソニーのレンズをマウントできる。しかしその差は2mmしかない。
たとえば、ニコンFのフランジ距離44mmとソニーEの18mmの間には26mmもの空間があるため、ニコンレンズをソニーのカメラボディと通信させるために必要なすべての電子機器を詰め込むことができた。これにより、絞り、オートフォーカス、メタデータを制御できる。しかし、キヤノンRとソニーEマウント間のクリアランスは2mmのみ、ニコンZとのクリアランスは4mmのみだ。この空間で同じ機能が達成できるかどうかは未知数だ。もしできなければ、単なるマニュアルレンズになってしまう。
他のアダプターバリエーション
通常のアダプターの世界の外側にあり、このハンドブックにも記載されていないが、他のバリエーションについても触れておこう。
アナモフィックアダプター
これらのアダプターはレンズの前面に装着し、アナモフィックな映像に変換する。レンズマウントを変更したり、レンズとカメラの間に装着するものではない。画像を水平方向に圧縮することで、より広い画角の映像を実現する。
フォーカス確認
一部のレンズアダプターは、オートフォーカスをサポートしていないが、フォーカスが合っているかどうかは確認できるものもある。キヤノン製カメラの場合、これは、ビューファインダーのフォーカスポイントが赤く点滅し、オンにすると、オートフォーカスレンズの場合と同じようにビープ音が鳴る。これは、すべて手動レンズを使用する場合に便利だ。
スピードブースター
これはおそらく、最も一般的に使用されているアダプターだろう。 Metabones(およびその他のブランド)は、あるマウントから別のマウントに変換するだけでなく、あるイメージサイズから別のイメージサイズに変換することができるアダプターだ。フルフレームレンズは、S35センサーに対応でき、フルフレームセンサーとほぼ同じように使える。
カメラメーカー製純正アダプター
レンズマウントの切り替えは大きなリスクであり、多くの潜在的な問題を抱えている。レンズ技術が発展し、新しい機能が登場するにつれて、それは必要悪となる。オートフォーカスの導入により、レンズマウントの更新がもたらされ、ミラーレス革命によりまた別のマウントが現れた。カメラメーカーは、古いレンズを新しいプラットフォームに対応できるアダプターも用意して、新しいプラットフォームへの移行を促進している。
キヤノンとニコンは、既存ユーザーがミラーレスにスムーズに移行できるよう、高性能のレンズアダプターを比較的低価格で導用意した。ソニーも2010年のEマウント導入時、同じことをした。これらのアダプターはカメラメーカーから直接提供されているため、互換性の問題は無い。自社のレンズなので、自分のカメラに最適に対応する術を心得ている。これらのアダプターに関しては、その性能に問題は無い。
まとめ
DSLRレンズをミラーレスカメラに適合させることは、レンズの選択肢を広げるうえでも素晴らしいことだ。パナソニックLumix S1、キヤノンEOS R、ニコンZ6では、ネイティブレンズが揃うまで今後数年間アダプターに頼る必要があるだろう。これらのカメラは革新的で高性能だが、まだまだレンズのラインアップが追い付いていない。電子アダプターを考えると、キヤノンが最も適応性のあるレンズを提供できる立場にいる可能性がある。ソニーやニコンよりも深いフランジ距離を選んだのは、かなり戦略的な理由からだ。レンズのフランジ距離がカメラ本体のそれよりも深く、イメージサークルが十分に大きければうまく機能するのだ。
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