URSA Mini Pro12Kは独自のセンサーを備え、他のカメラにはない機能を搭載している。今回はこのURSA Mini Pro12Kのラボテストを行った。今回はそのPart1でローリングシャッターとダイナミックレンジをテストする。
ブラックマジックデザインは、多くの革新的なカメラや機器を開発している。2013年に発売されたBlackmagic Pocket Cinema Camera(BMPCC)もその一つだ。筆者もこのカメラを愛用しており、各地の旅行に持って行った。
筆者は当初フルHD(1920×1080)よりも高い解像度に懐疑的だった。ソニーα7S IIの内部8ビット4Kは実に素晴らしかったが、色がもう一つ気に入らなかった。その後、2019年に、BMPCC6Kを購入した。これは、スピードブースターを使用せずにネイティブのスーパー35mmセンサーで撮影したかったためだ。さらに、6Kセンサーから内部でダウンサンプリングされたフルHD ProResHQモードは筆者にとって重要な機能だった。
BMPCCC6KからダウンサンプリングされたフルHDは素晴らしいが、それでも筆者は、このカメラで6K BRAWでしか撮影していない。高速で効率的な内部RAWコーデックとDaVinci Resolve Studioバージョンとのキム合わせは全てに満足できる。
そして今回は12Kカメラを入手した。 12Kというのは、BMPCCの約38倍の解像度とな。
なお、テストに関しては長くなるので、レビューを2つに分けることにした。Part 1では、ローリングシャッターとダイナミックレンジについて解説し、Part 2では、ラティチュードについて解説する
URSA Mini Pro12Kの独自のセンサー設計
URSA Mini Pro 12Kのスペックについてはこちらを、インタビューはこちらを参照いただきたいが、ファームウェアアップデートについてはこちらとこちらを参照いただきたい。
解像度とフレームレート: URSA Mini Pro 12Kは、Super35mmセンサーよりも大きいセンサーを備えており、1.3倍のクロップファクター(27.03 x 14.25 mm)と12288×6480(80メガピクセル)の驚異的な解像度を持つ。 12Kでは60fpsで撮影でき、12K 1:2.4のアスペクト比なら75fpsで撮影できる。 8Kおよび4Kフルセンサーモードでは、フレームレートは最大120fps(1:2.4では160fps)で撮影できる。
このテストでは5:1の圧縮率を使用しており、カメラのファームウェアは7.0だった。
レンズ:この超高解像度に対応できるレンズとして、ZEISS Compact Prime CP.2 50mmT2.1マクロに落ち着いた。これは筆者が知っている中で最もシャープなレンズの1つだ。
ポストプロダクション:カメラはBlackmagic RAW(BRAW)でのみ撮影するため、DaVinci Resolveを分析に使用した(バージョン17.1パブリックベータ8)。 RAWタブの設定は次のとおり。(TIFFのダイナミックレンジエクスポートの場合、彩度とコントラストの設定は「1」のままにした)。
Resolveで12Kファイル(フレームあたり80メガピクセル!)を扱うため、パソコンは高性能なものが必要になる。最初は、8GBのVRAMとNVIDIA GTX980カードを搭載した古いラップトップで試したが、4Kタイムラインで「GPUメモリがいっぱいです」というエラーメッセージが表示された。フルHDでは問題なく使用できた。
そのため、AMD Ryzen 3900Xと32GB RAM搭載のパソコンに、NVIDIAから借用した24GBのVRAMを搭載したGeForce RTX3090を搭載して使用した。
NVIDIA GeForce RTX 3090 GPU負荷–Resolveの25fps 4K DCIタイムラインは非常に応答性が高く(5:1圧縮比ファイルにフル解像度の12288×6480デコード品質を使用)、12.5 GBのメモリで約20%のGPU負荷で実行された。時間的(3フレーム、motion estimation: faster)および空間的ノイズリダクション(モード:faster)が追加された場合、GPU負荷は80%に増加するが、再生は24〜25fps前後で継続する。
タイムラインの解像度を8K DCIに上げると、再生は15 fpsに低下するが、GPUの負荷は38%に過ぎず、使用されるメモリは13GBだ。明らかにセットアップの他の何かが再生を阻んでいる(「電力制限」の理由)。ノイズリダクションが追加されると(上記のように)、再生は7 fpsに低下し、GPU負荷は約80%に増加し、メモリ使用量は16GBに増加する。
最後に、12Kのタイムラインで、38%のGPU負荷で約7 fps、メモリ使用量は約18GBだった。理由として、GPUの「動作電圧による制限」が挙げられる。上記のようにノイズリダクションを追加すると、GPUの負荷が約90%になり、fpsが約3〜4に低下する(メモリ使用量は20GBに増加)。 12Kのタイムラインが必要になるわけではないが、ダイナミックレンジ分析のためにTIFFをIMATESTにエクスポートするには、ネイティブセンサーの解像度が必要だった。
要約:RTX 3090 GPUは、すべての解像度でネイティブ12Kファイルを再生できる。24GBのメモリで十分だが、タイムラインの解像度によっては再生fpsが低下する。 4K DCIでは、ノイズリダクションが追加されたとしても、タイムラインの再生は問題ない。
ローリングシャッター
このセンサーは、6×6ピクセルの独自のアレイを使用し、白(クリア)ピクセルを含む赤、緑、青の量が同じだ(ブラックマジックデザインの特許資料を参照)。さまざまな解像度とセンサー領域で読み取るように設計されている。
したがって、カメラはセンサー領域全体を使用して12K、8K、または4Kで記録できる。最大フレームレートが12K時の60 fpsから8K時の120fpsに増加するが、4K時も120fpsで同じままであるため、ローリングシャッターも12Kと8Kで異なる。
結果はその通りで、12Kの場合、ローリングシャッターは15.7ミリ秒となった。
12K DCI (17:9)でのローリングシャッター値は15.7msで、これは、このセンサーサイズでは非常に優れた値だ。たとえば、BMPCC6Kは19.8 msだし、C300 MKIIIは15.6 msだ。
8Kでは、ローリングシャッター値は7.8ミリ秒に大幅に低下する。
これは素晴らしい値であり、8K/120fpsの記録が可能だ。 4Kフルセンサー読み出しでは、ローリングシャッターは同じく7.8 msだ。
BMDフィルム、ISO800でのダイナミックレンジ
上記のように、センサーは、センサー全体で読み取りさまざまな解像度で記録できる。したがって、12K、8K、4Kのフルセンサー記録モードが同じダイナミックレンジを示すかどうか、あるいはカメラのダウンサンプリングでノイズが減少するかに興味がわく。
そうであれば、低解像度で記録して、美しいダウンサンプリングされた画像を生成できる。
たとえば、BMPCC6Kは、カメラでダウンサンプリングを実行している(たとえば、センサー領域と解像度全体からフルHDにダウンサンプリングされている場合)。
要するに、これは以下に見られるようにURSA Mini Pro12Kには当てはまらない。したがって、最大解像度で記録し、ポストプロダクションで目的の解像度にダウンサンプリングすることは非常に有益だ。
なおダイナミックレンジのテスト方法は、こちらを参照いただきたい。
12Kで記録する場合
一般に、第5世代のカラーサイエンスとBMDフィルムログカーブクリップの組み合わせは、約75%IREとなっている。このため、画像内のクリップされた部分の明るさが低いほど、ハイライトは有利になる。
BRAWで収録すると、ポストプロダクションでハイライトを回復することができる。これは通常、クリップされたカラーチャネルが回復アルゴリズムによって再構築されるため、ハイライトを約1.5ストップ拡張する。我々のダイナミックレンジの標準的な測定では、このハイライト回復オプションは考慮していない。これは、不用意なカラーシフトを引き起こす可能性があるためだ。これについてはラティチュードテストで触れることにする。結果として、これらのストップはカウントされない。しかし、色の精度は低下するが、飛んでしまった色を回復する有用な方法になる可能性がある。
12K、ISO800で撮影したXyla 21チャートの波形は、ノイズフロア上に約12ストップを示している(注:これは12Kタイムラインの波形)。
上のチャートのように、ノイズフロアの下には、かなりはっきりした13番目と、かすかに14番目、15番目のストップが見える。従って、IMATESTによって、信号対雑音比2(SNR)で11.8ストップのダイナミックレンジ、SNR = 1で12.8ストップと確認される。下の中央のグラフでは、左側の青い(低)曲線の上にストップが識別される。パッチ範囲は16.6ストップで与えられる。
8Kで記録する場合
IMATESTは、SNR = 2で約11.5ストップ、SNR = 1で12.6ストップを示している。したがって、ダイナミックレンジはわずかに低下する。下を参照。
4Kで記録する場合
この場合は、IMATESTはSNR = 2の場合は約11.3ストップ、SNR = 1の場合は12.5ストップを示す。
4K解像度(4Kタイムラインからの波形)で撮影されたXyla 21チャートの波形プロットを見るとわかるように、ノイズが大きくなる。ここでは、ノイズフロア内の13番目のストップがほぼ消えている。
ポストプロダクションでダウンスケールする場合
8Kで撮影し、ポストプロダクションで4Kにダウンスケーリングすると(DaVinci Resolveの「sharper」アルゴリズムを使用)、SNR = 2で12ストップ、SNR = 1で13.1になる。
最後に、12Kで撮影しポストプロダクションで4Kへダウンスケーリングすると、SNR = 2で12.4ストップ、SNR = 1で13.4ストップとなる。
12K を4Kタイムラインにダウンスケールした場合の波形プロットでは、実際にはノイズフロアの上に13ストップがある。
他のS35mmカメラとの比較
他のカメラとの比較を見てみよう。
URSA Mini Pro 4.6K G2は、SNR = 2でダイナミックレンジが12.6ストップ、SNR = 1で13.5ストップを示した(ProRes)。したがって、4Kにダウンスケーリングされた12Kよりもわずかに高い値だが、12Kでは、4.6Kでは表示されないノイズフロア内で1〜2ストップ(SNR = 1を超える)を示している。 従って12Kの場合、ポストプロダクションでノイズフロアからこれらのストップを掘り出すことができる。
BMPCC6Kは、SNR = 2で11.8ストップ、SNR = 1で12.9ストップを示し、SNR = 1を超えるノイズフロア内に1ストップが表示されている。
したがって、全体として、12Kはダイナミックレンジでは他の同社のカメラより優れている。
キヤノンC300 MKIIIは、SNR = 2で12.8ストップ、SNR = 1で13.9ストップで、さらにノイズフロア内に1〜2ストップあり、最新のS35mmカメラのダイナミックレンジを示している( ARRI Alexaについては今後触れる予定)。
Part1のまとめ
結論は明らかで、12Kファイルを保存するためのメディアコストに余裕がある場合は、12Kで撮影することをお勧めする。
妥協案は8Kでの撮影だ。7.8ミリ秒の高速センサー読み出しに切り替わり、最大120 fpsの高いフレームレートが可能になるだけでなく、4Kタイムラインにダウンサンプリングされた8Kファイルは安定したダイナミックレンジ値が可能だ。
センサーのサイズがS35mmよりわずかに大きく、解像度が80メガピクセルであることを考えると、これは良好な結果と言える。