ハイスピードカメラPhantomで有名な米国の会社Vision Research は、Phantom EVOとCinemag IVに続き、グローバルシャッターを搭載したPhantom Flex 4K-GSの出荷を開始した。
Phantom Flexカメラは、4Kで約1000fpsの画質を誇り映画制作者の夢と言える製品だろう。軍事仕様にも耐えられるスペックながら、Arri Alexaやソニー F55のような簡単な操作性を持ち合わせている。また、Phantom Flexがわずか10年で1080p/1000fpsから2.5K/2500fpsに改良されたことにより、映画芸術科学アカデミーの科学技術賞を受賞したのは当然のことだろう。そして今、4Kで最大1000fpsの撮影ができ、グローバルシャッターを備えた新しいPhantom Flex 4K-GSが発売された。
Phantomは高速での映像撮影のため、かなり発熱する。筐体を白くすることにより、できるだけ外的熱要因を受けないようにしているのだ。特に野生動物のドキュメンタリーを撮影する場合などではかなり厳しい環境化で撮影するため、重要な項目だ。これはVision Researchが軍事的背景から学んだ教訓であり、電子機器を断熱する熱設計により、-20℃〜50℃で動作が可能としている。
新しいPhantom Flex 4K-GSは、グローバルシャッターの新センサーを使用しており、シャープなイメージを撮影するとともに、ローリングシャッター現象を最小限に抑えている。
それ以外大きな変更はなが、将来のすべてのモデルでグローバルシャッターが採用されるのかもしれない。
Phantom Flex 4K-GS の主な技術仕様
- 35mm 9.4メガピクセルセンサー
- グローバルシャッターはローリングシャッターに切替可能で、その場合ダイナミックレンジが向上する
- 4096 x 2304で938 fps、4096 x 2160で1000 fps、2048 x 1080で1975 fps
- 最小露光時間5μsec
- 内蔵メカニカルシャッター
- 3G-SDIビデオ出力
- ライブビデオと再生のためのデュアルSDIモード
Phantom Flex 4Kが2014年に市場に出たとき、それは技術的に突出したカメラだった。しかし、多くのカメラメーカーは、スローモーション技術で、授受にだが、確実に追いつきつつある。経験則では野生動物や人間の活動を撮影するのには、200〜300fpsで十分と言われている。BBC野生動物の放送では、4K/100fpsで制作する必要があるとされている。
これを実現するカメラはまだ少なく、Phantomと他のカメラとの間にはまだまだ大きな開きがある。例えばREDのカメラでは、4K/100fpsを実現するには圧縮比を下げる必要がある。一方、Phantom Flexでは非圧縮RAWファイルで1000fpsを実現しており、高画質な映像が得られる。そのため価格も相当高価で、Phantom Flex 4Kパッケージは最低でも100,000ドル以上だ。
Vision Researchは長年、ハイスピード映画撮影技術の最前線におり、その製品は科学、研究、軍事目的で使用されている。同社はまた、映画業界にとってスローモーションの表現を可能にし、あらゆるジャンルの映画に新たな表現方法をもたらしたといえる。
Phantom Flex 4Kで撮影された映像はこちらで見ることができるので、参照願いたい。