色温度を正しく理解しているだろうか? 色温度は映像作品の出来を大きく左右するとても重要なものだ。
上の写真は同じアングルでホワイトバランス(色温度)を違えて撮った3つのショットを一つにしたもの。
- 左上:3200K(タングステン) ホワイトバランスが合っていない
- 右上:5600K(太陽光) ホワイトバランスが合っている
- 下:正しいホワイトバランスの5600Kの映像をカラーコレクションしたもの
色温度がいかに重要か一目瞭然だろう。
なぜ色温度が重要なのか?
色温度が映像にどのように影響するかを知っておくことは、撮影の基本だ。白い部分を白にすればよいというものではない。色のある他の部分も考えて、全体のバランスこそが重要なのだ。通常、見た目の白を白として映像記録したいので、白い部分でホワイトバランスを取ると、他の部分も正しくホワイトバランスがとれる。
白い部分が白く見えるのは、脳がここは白いと認識しているからだ。しかし、実際は良く晴れた日の屋外ではそれはブルー寄りだし、あるいはまた、太陽が水平線に隠れようとしているときは、オレンジ色なのだ。
カメラのホワイトバランス
人間は状況に合わせて白を白と認識できるが、カメラはそうはいかない。いちいちここが白だと教えてやらなければならない。そしてまた、それは逐一変化する。これが“ホワイトバランス”を取るということだ。RAW以外のフォーマットで記録する場合は、この設定が映像のカラーバランスを決定づけてしまう。後処理でカラーコレクションできるが、正しく調整するのは結構大変だ。
RAW
RAWで記録する場合は、ホワイトバランスのセッティングは、単にモニターに反映されるだけだ。記録される映像にはメタデータとして保存され、記録される映像そのものには影響しない。RAWで記録すると、後処理で色温度を自由に調整できるのだ。
それでは、色について考えてみよう。
物理的な色とは?
可視光とは電磁波で、その周波数(波長)が色を決めている。可視光の波長は390nm~700nmである。(ナノメートル:ナノは1mの10億分の1、あるいは0.000001 mm)
赤いものが赤く見えるのは、赤以外の波長の光を吸収し、赤い波長の光だけを反射しているからだ。そして我々は反射された光を見て、脳が赤だと判断しているのである。
しかし、白い表面は選択肢がない。照射されている光の全ての波長を反射しているからだ。
ホワイトライトとは?
ホワイトライトとは、可視光のすべての波長を含む光のことである。これをプリズムに通すと、全ての波長の光が分光されて見える。
我々が実際に見ているすべての光は、色を持っている。それは色々な波長の光が混ざり合ったもので、我々が目にする“白”は、それを照らしている光源によって決まってくるのである。
色温度とは
出展:ウィキペディア - 色温度は、表現しようとする光の色をある温度(高熱)の黒体から放射される光の色と対応させ、その時の黒体の温度をもって色温度とするものである。
黒体とはすべての波長の光を吸収する物体で、白体が全ての波長の光を反射するのと正反対のものである。
ウィキペディアによると黒体放射とは、黒体放射(英: black body radiation)とは黒体から放射される光。温度が低いときは赤っぽく、温度が高いほど青白くなる。夜空に輝く星々も青白い星ほど温度が高い。温度はK(ケルビン)で表示される とある。
即ち、黒体放射によって発せられる光の色は、その温度で言い表すことができるのだ。
黒体放射の温度はケルビンで表示されるが、同様に黒体放射の色(スペクトラム)もケルビンで表示される。
これは、ダイヤグラム上でPlanckian locus. 黒体軌跡)と呼ばれる曲線で表される。
現実世界の光
下の表はウィキペディアから参照したものだが、実世界で存在する光源の色温度がどのようなものか参考になるだろう。(訳者注:日本語のWikipediaには同様の表が無いため、英語版をそのまま転用します)
Temperature | Source |
---|---|
1,700 K | Match flame, low-pressure sodium lamps (LPS/SOX) |
1,850 K | Candle flame, sunset/sunrise |
2,400 K | Standard Incandescent lamps |
2,550 K | Soft White Incandescent lamps |
2,700 K | “Soft White” compact fluorescent and LED lamps |
3,000 K | Warm White Compact fluorescent and LED lamps |
3,200 K | Studio lamps, photofloods, etc. |
3,350 K | Studio “CP” light |
4,100–4,150 K | Moonlight |
5,000 K | Horizon daylight |
5,000 K | Tubular fluorescent lamps or cool white/daylight compact fluorescent lamps (CFL) |
5,500–6,000 K | Vertical daylight, electronic flash |
6,200 K | Xenon short-arc lamp |
6,500 K | Daylight, Overcast |
6,500–9,500 K | LCD or CRT screen |
15,000–27,000 K | Clear blue poleward sky |
These temperatures are merely characteristic; considerable variation may be present. |
ホワイトバランスが正しく取れているかを確認するには、使用している照明の色温度を知っておく必要がある。映像用によく使われる二つの照明の色温度は3200Kのタングステンランプと5600Kの昼光色(正午の太陽光)である。この二つの数値は、後処理でカラーコレクションする場合にも、大変役に立つものだ。
その他の数値としては、6500K、曇り空の下では、この数値近くにホワイトバランスをセットすると良いだろう。
企画段階で
表現手法として意図した場合は別だが、違った色温度の光源を混ぜて使うと、往々にして問題が起きる。企画段階では、できるだけ一つの色温度の光源で統一するのが望ましい。ロケハンでは昼と夜の照明や、どのような照明が使えるかを見ておくと良いだろう。
前段階で照明の問題点を洗い出すことにより、どのように対処するか、どのような機材が必要か判断できる。
色温度を理解しておくと、照明をいじれない状況でも、カメラのホワイトバランスを適切にセットすることができる。
色温度を正しくセットするのは難しくない。カメラのホワイトバランスを正しくセットしておくことが、ポストプロダクションでの後処理を楽にする秘訣だ。