CES2019での小さなニュースだったが、Atomosとニコンは、ニコンのフルフレームミラーレスカメラZ6とZ7からRAW映像を出力し、 Atomos Ninja VでProRes RAW記録すると発表した。この発表は、将来のミラーレスカメラのロードマップに影響を与える可能性があるかもしれない。
このニュースは、まだ製品発表ではなく開発を伝えるもの。しかしこのコラボレーションが意味するものは、ミラーレスカメラでのRAW記録が身近になることを示している。映像制作者は常に最高の画質を追求している。 SD、HD、4K、そして8K、あるいは8ビット、10ビット、12ビット、そして16ビットと、これまでの進化を見ても分かるとおりだ。今回の発表により、他のカメラメーカーもRAW記録を意識せざるを得ないだろう。ただし、すべてのユーザーが常にRAWが必要かというと、そうではない。しかし、可能性として今後求められていくのは必然だろう。
Atomos Ninja V とニコンZシリーズによるRAW記録
ブラックマジックデザインの Pocket Cinema Camera 4k(BMPCC4K)は、すでにRAWを内部あるいは外部で記録することができる(現在はcDNGのみDUOあが今後Blackmagic RAWもサポート予定)。オリジナルのBMPCCでもcDNGで記録できたが、どちらも比較的小型のセンサーを搭載している。一方、ニコンZ 6とZ 7はフルフレームセンサーを備えており、正確なフォーカシングのためには外部モニターが必要となる。そこで Atomos Ninja Vモニターレコーダーを使用すると、同時にProRes RAWで記録できるというわけだ。フルフレームカメラでRAW記録するソリューションがこれで完成する。
ニコンは守らなければならないシネマカメラのラインアップが無いので、この決定は比較的容易だったのかもしれない。更に同社のミラーレスカメラZシリーズのプロモーションも必要だったと考えられる。キヤノン、パナソニック、ブラックマジックデザインでは事情が多少異なる。しかし、今回のニコンとAtomosのコラボレーションにより、他のメーカーも何らかの動きが必要になるかもしれない。パナソニックのフルフレームミラーレスカメラがどのような戦略で来るかも興味あるところだ。同社の EVA1はRAWレコーディングの実績があるので、やろうと思えばできないことはないはずだ。またキヤノンはC200にCinema RAWLiteを搭載しているので、同社も決断次第だ。
実際の接続
ニコンZ 7やZ 6カメラは、4K HDMIケーブルを使用してRAWデータのストリームをNinja Vに出力する。 RAWデータはセンサーから読み出された未処理の映像データなので、処理能力というよりは転送速度がキーになる。Ninja Vで受信された映像データはProRes RAWフォーマットに再パックされる。その後ビデオストリームはリムーバブルSSDドライブに記録される。
ディべイヤリングなどの重い処理は編集時にパソコンに任せることになる。RAW編集を行う場合、編集用コンピューターは通常CPUとGPUによる高い処理能力が必要となり、大容量のSSDを必要とするが、ProRes RAWはそれらの負担を軽減することができる。
2019年の動向
フルフレームセンサーミラーレスカメラでRAWを記録することが普及するだろうか?以前Magic Lanternはキヤノン5DMKIIをハックし、RAWレコーディングを可能にした。完璧ではなかったが、それなりに使用できたものだ。さて2019年はRAW記録が一般的になるだろうか?もしそうなると、RAW記録をサポートしないメーカーは、RAW機能が搭載されていない理由を説明するのに苦労することになるだろう。そしてこの競争原理はユーザー、特にインディ映画制作者などにとっては利益になるだろう。もちろん、すべてのユーザーが必要とするわけではないが、RAW記録は8Kよりも重要と考えるユーザーは少なくないだろう。
RAW記録が普及することは、少なくとも我々にとって歓迎すべき潮流だ。この流れが、ハイエンドのシネマカメラにどのような影響を与えるのか、非常に興味がある。交換レンズマウント、内蔵NDフィルター、モジュール設計、あるいはさまざまな電源オプションなどの機能は、大型で高価なカメラでしか実現できないのもまた事実だ。しかし、その差は小さくなっていくことだろう。ハイエンドモデルを維持しながら、高性能のミラーレスカメラを開発していくのは、メーカーにとって大きな課題だ。
ハイエンド機の機能が低価格なカメラにどんどん採用されつつある。しかし、低価格なカメラでは、真にプロが使用できる完璧なカメラではないので、高価なハイエンドカメラの需要はそう簡単には無くならないとも考えられるが。
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