ジンバルのOSMOとドローンInspire 1 に搭載されている Zenmuse X5R RAWカメラのテストを何度か行った。その結果、X5Rはかなり良好な画質を持っていることが分かっている。ただ、$3200という価格は Zenmuse X5に比べると魅力が落ちてしまう。そこで、今回はX5とX5Rの比較をしてみよう。
ZenmuseX5とX5Rの違い
この二つのカメラの違いは簡単だ。X5Rは高価なDJI SSD メディアにRAWで記録するのに対し、X5は低レートのH.264で記録する。その他は、ほぼ同じである。同じ4/3
インチ(マイクロフォーザーズ)センサー、同じレンズ(レンズキットの場合)、同じジンバルを使用している。
従って、画質の違いのみが、選択する時の判断基準となる。ラボテストの結果を見てみよう。
X5とX5Rのラボテスト
興味ある結果が出た。X5Rのダイナミックレンジテストでは、X5Rの使用可能ダイナミックレンジはだいたい12Stopとなった。それに比べ、X5のそれは9Stopだったのだ。使用したソフトウエアは、ノイズは計測するが最端の色変わりは見ることができないので、これを考慮すると、X5の実質使用可能域は7Stop程度だと思われる。なお、テストは、X5RはF/2.8、X5はF/5.6で行った。
テストチャートから、画質が著しく異なっていることが分かる。かなりの縞模様が見えるし、コーデックによる劣化も認められる。暗部は特に映像が甘くなり、ディテールが失われている。
これが意味するもの
即ち、X5でハイコントラストの被写体、例えば風景とか晴天下、あるいは順光下で撮るときは、かなり厳しい状況だということ。ドローンでの撮影では更に影響が大きいだろう。X5のダイナミックレンジはInspire1のX3に近いものだ。
更に詳細を見てみよう
X5とX5Rの画質比較
X5とX5Rの画質は大きく異なる。以前、X5Rを他のプロフェッショナルシネマカメラと比較したとき、われわれはX5Rを絶賛した。しかしX5は、残念ながら、極めて貧弱だ。X3に通じるものがある。カラーグラデーションは特に問題だ。他の8ビットカメラでも、もっと良い結果だろう。これではカラーグレーディングの余地はなさそうだ。もちろんX3と同様、LUTを適用することはできるが。
ディテールに関しては、X5Rの方が鮮明だが、十分な照明下ではX5も問題ない。X5もシャープな映像だが、ただ、自然な感じは多少損なわれる。X5はX3よりは良好な結果だった。
暗部では、ディテールが失われていることが分かる。ダイナミックレンジの不足が、実際の場でどのように影響するかを見ることができる。コーデックとプロセッシングが良くないのだろう。暗部でのディテールが、全ての部分で失われている。強調されたエッジと不思議なマゼンタ色も悪影響を及ぼしている。
X5とX5Rの他の違い
バッテリーの持ち
フルチャージしたOSMOのバッテリーでX5は59分使用できる。一方、X5Rは消費量が大きく、26分しか持たない。(両方のカメラを連続記録して計測した)
DJI Inspireで使用すると、X5Rの飛行時間は極めて短いものとなってしまう。
ノイズ
X5Rの小さいファンによるノイズに関しては、以前レポートした。OSMO X5Rをフィールドテストした結果、実際のところ、オーディオに関してはとても使えないことが分かっている。
ところが、X5はファンが回って入るが、比較的うるさくないのだ。簡単な計測だが、35dBの環境の部屋で、X5は55dB、X5Rは60dBという計測結果を得た。両者とも10Cmの距離で計測している。X5Rのノイズはハイピッチなため、より不快に感じるのかもしれない
記録メディア
X5はマイクロSDカードに記録するので実用的だ。$15でリーダーも付いている。それに比べてX5Rは512GBで$1,000もするDJI SSDが必要だ。RAW記録では高速な記録レートと大きな記録容量が必要になる。これは色々な場面で大きな課題となるだろう。ただし、もちろん、プロにとっては、RAWのワークフローは見逃せないメリットではある。
まとめ
X5Rが他のシネマカメラとの比較やフィールドテストでかなり良い結果だったので、X5がどの程度検討してくれるか、かなり期待していた。結局のところ、違いは記録方式にあった。
このテストを通じて、X5RのRAW記録は画質とダイナミックレンジに大きな差異があることが分かった。X5のプロセシングと圧縮方式は初歩的なもので、これにより画質が劣化していると思われる。ダイナミックレンジは大きく損なわれ、X5Rが12Stopあるのに、X5では実質使用領域はたった7Stopしかない。
X5の強みは軽量、交換レンズ、オートフォーカス、そして4K記録だ。X5Rのディテールや色解像感はより良いものだが、X5のそれもセミプロレベルでは使えるだろう。残る疑問点はX5がX3を超える何かを持っているかだ。答えはオートフォーカスだ。ただ、ドローンでは、それは大きな優位性にはならない。X3からアップグレードする場合は良く考える必要がある。近く、X3、X5、そしてX5Rの比較を予定しているので、参考にして欲しい。
X5RをOSMOとInspireで使って見て、X5Rはやはり期待を裏切らなかったが、X5は力及ばずと言うことが確認できた。今後の投資計画やワークフローの参考にして欲しい。ただ、X5Rはやはり高価だし、特に高価なSSDも必要だし、ワークフローも複雑になってくることも確かである。
皆さんが、自分の環境で、これらのカメラをどのように考えるか、教えていただきたい。コメントを寄せていただければ幸いだ。