ソニーFS7のXAVC-I(Intra)コーデックは、通常、XAVC-L(Long)より高画質と認識されている。しかし、それなら常にXAVC-Iで撮っていれば良いのだろうか? XAVC-Lの存在意義は?
先日、友人とソニーのFS7で撮影した時、XAVC-Lを使用する場合があるかについて話した。 普通、XAVC-Iで撮るだろうという意見は同じだった。ただ、動きがあまりないシーン(インタビューなど)を収録する場合、私は“L”を選択する。もちろん、動きの多い被写体を撮影する場合は、“I”を選択する。意外にも、これについて皆戸惑いを隠さなかった。皆さんはどう思われるだろうか?
違いは何?
圧縮について考えるとき、通常、XAVC-Iのような空間圧縮は、画像内のピクセルブロックにわたる色および輝度値を平均化するプロセスであると考えられる。空間圧縮は実際、ビデオフレームの圧縮に大きな効果を得られるが、ファイルサイズを縮小する唯一の方法ではない。 他方、XAVC-Lは時間圧縮を使用しているが、XAVC-Iはそうではない。時間圧縮(Temporal compression:時間圧縮は、ラテン語の「時間」を意味する「tempus」に由来する) には、GOP(Group Of Pictures)と呼ばれる特殊なフレーム構造を使用する。 XAVC-LはLong GOP構造を使用することから、XAVC-Lの “L”はLongを意味している。
時間圧縮はどのように機能するのか?
Long GOPを使用する時間圧縮について考えてみよう。例えば24fpsで記録する場合、本来なら毎秒24フレームが記録されるはずだ。しかし、時間圧縮で映像を圧縮している場合、実際には映像情報の一部しか含まれていないのだ。少数のフレーム(“I”フレーム)は全体を記録するが、他のフレーム(Predictive coded:予測符号化 “P”フレーム、あるいはBi-predictive coded:双方向予測符号化 “B”フレーム)は差分を格納するだけで、これにより全体的なファイルサイズを大幅に削減する。映像情報のデータレートが十分高く、圧縮アルゴリズムが十分効率的であれば、圧縮されていない映像と遜色ない画質になるだろう。ちょっと信じられないかもしれないが、実際の映像を見ると、ほとんどオリジナルと変わらないことが確認できる。
比較の例
https://vimeo.com/220461756
しかし、被写体やカメラの動きが速く、動きが予測できないような場合では、XAVC-Lのような時間圧縮では、望ましくない悪影響が出てその弱点を露呈することになる。 一方、XAVC-Iで比較的静止している被写体を撮影する場合は、データレートは動きのある場合と比べてあまり変わらず、XAVC-Lで記録した場合に比べてメリットが少ない。
どちらで記録するのが良いか?
すべてのシーンは異なり、撮影するたびに状況は異なる。 従って、常にXAVC-Lで撮影すれば良いというものではないし、その逆もまた然りだ。
たとえば、クロマキーでの撮影で、緑色のスクリーンをバックにインタビューを撮影する場合、XAVC-Lを選択すべきではない。XAVC-Lは8bit 4:2:0にすぎないため、10bit 4:2:2のXAVC-Iに比較して、色の情報が失われてしまうのだ。(これはキー信号を作る上で、重要なことだ)
まとめ
上記の例のように、XAVC-L(時間圧縮)でも問題ない画質が得られる場合もある。しかし、XAVC-Lがすべての状況で問題ないと思うべきではない。撮影するたびに、そのシーンに適したコーデック、あるいはガンマ、フレームレート、解像度、およびその他のものについて、最適な設定を選ぶ必要がある。次回はXAVC-IのようなIフレームのみを記録するコーデックが本当に最善なのかを考えてみよう。